背中越しに貴女を感じて




ちゃぽん…と水の跳ねる音がする。その音は短い残響を残し、狭く密閉された空間に響き渡った。

「…ふうー…」

 なみなみとお湯が張られた浴槽に身体を浸すと、思わず口からため息がこぼれる。
こんなにのんびりとお風呂に入るのは久しぶりかなー…。そんな事を考えながら、わたしは湯船の中で腕を高く上げて身体を伸ばしていました。

「なのは、湯加減はどうかな?」
「んー…ちょうど良くて溶けちゃいそー…」

全身を包む温かさと、聞いていて心地好い声に、つい弛みきった表情でそんな風に答えてしまう。そんなわたしの反応にフェイトちゃんはあはは、と笑いながら、身体に付いた泡を洗い流しています。

「でも、こんな風にフェイトちゃんとまったり過ごすのも久しぶりかなー」
「そうだね、お互い仕事で忙しかったし…。でも、毎日メールでやり取りしてたから寂しくはなかったよ」
「にゃはは、それはわたしもだよ♪」

そう言いながら、わたしは笑顔でフェイトちゃんに笑いかけました。
わたしは戦技教導官、フェイトちゃんは執務官という、それぞれに違う役職に就いています。
だからなかなか一緒に居られないけれど、それでもどちらからともなく連絡をしあっては、一緒に居られる日を作っていて。そうしていたから、明日みたいに二人とも休みの日を作ることが出来たのかもしれません。

「なのは、私も入っていいかな?」
「うん、どうぞー」

そんな事をぼんやり考えていると、身体を洗い終わったフェイトちゃんが浴槽に入ってきました。浴槽自体はそれ程の大きさではないけれど、女性二人なら入れない事はありません。わたしは軽く足を曲げ、フェイトちゃんが入りやすいようにスペースを作りました。

「…ふう…」

 フェイトちゃんは浴槽に身体を浸すと、さっきのわたしと同じようにため息をつきました。


「…ねえねえ、フェイトちゃん」
「ん? なあに、なのは?」
「この浴槽も、随分狭くなっちゃった気がするね…。昔は二人で向き合いながら入っても、足が伸ばせてたのに」
「…うん、そうだね…、あの頃が懐かしいよ」

 そう言うフェイトちゃんは、少し遠くを見る様な顔でそう答えました。そして、ふと思いついた様に…。

「そうだ、こうすれば…」
「にゃっ!? ふぇ、フェイトちゃんっ!?」

 突然わたしの腰に手を回すと、くるりとわたしの身体をはんぶん回転させて、そのままフェイトちゃんの身体の上に収まるように乗せました。

「ほら、こうすれば二人とも足を伸ばせるよ…」
「にゃ…もー、フェイトちゃんてば…」

お湯の温かさに、フェイトちゃんのぬくもりが加わる。背中にフェイトちゃんの存在を感じて、胸の鼓動が速くなっていくのが判る。
…急に身体を触られてどきっとしたのに、こんな体勢じゃ恥ずかしくて、まともに話も出来そうにないよ。

「フェイトちゃ…」

だから、わたしは抗議しようと思って、フェイトちゃんの顔を見上げた。

「ぁ…。」

わたしが背中越しに見上げたその顔は、とても綺麗で繊細で。

「…? なのは、どうかした?」
「え、えっと…。」

 白い肌、宝石の様な紅い瞳、金糸の様な長髪…。いつもより近いその距離は、いつもは当たり前すぎて気付けないものを、十分すぎる程に気付かせる。
――フェイトちゃん、まるでお人形さんみたい――
わたしはそう考えながら、フェイトちゃんから目が離せなくなっていました。


「…なのは…」
「んむっ…」
 フェイトちゃんはわたしの名前を呼ぶと、その唇をわたしの唇に重ねてきた。突然のキスに緊張して、思わず身体が強張ります。

「ん…んちゅ…」

 それでも、フェイトちゃんは舌で口をこじ開けて、わたしの中に入ろうとする。舌と舌とを絡められて、わたしの強張ってた身体は、すぐに力が抜けていってしまって…。

「んっ…んあぅっ…」
「ん…ぷふぁ…」

 長い口づけに、息が苦しくなって互いに口を離しあう。そこには白く光る橋が架かり、やがて名残惜しそうに切れて消えていきました。

「はぁ、はぁ…、ふぇいと…ちゃん…」
「ごめん、なのは…。あんまり見つめられたから、がまん出来なくなっちゃって…」

 そう言いながら、フェイトちゃんの手がわたしの身体の上を滑っていく。首、鎖骨から胸にかけて、その手はお腹の上を通って、やがて…。

「っぁ…ゃあっ…」
「やだ? なのは…」

 そんな風に少し意地悪な事を聞いてくるフェイトちゃんに対して、わたしはただ首を横に振る事しか出来ない。

「ふふっ、可愛いよ…なのは…。大好き…」

そんなわたしの様子にフェイトちゃんは、耳元でそう囁きました。


 その後、完全にスイッチの入ったわたしとフェイトちゃんは、お風呂の中でお互いを求めあいました。
 次の日は、朝から一緒に遊びに行く予定だったけれど…。少しくらい寝坊してもいいから、今はフェイトちゃんを全身で感じていたいから…。

フェイトちゃん、なのはもフェイトちゃんのこと、だいすきだよ。





あとがきという言い訳
 もういろいろごめんなさいとしかいいようがありません。
 とりあえず、この二人はどこでもいちゃいちゃしてればいいよという思いだけでも伝わればこれ幸い。





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